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よく言われる「日本酒の問題点」?

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先日書いた「敬老の日ギフト試飲会」の告知記事の中で、日本酒の戦後史に関して少し触れたのですが、それに関してお客様と話していてウケが非常に良かったのでブログに書いてみるコトにします。 日本酒に関する問題意識なのですが、よく世の中で言われている問題点はこんな感じだと思います。

  • 若者の日本酒離れがヒドイ!
  • 日本酒の販売量が減り続けている!国酒なのに!
  • 蔵元の数も減り続けている!伝統文化が途絶えてしまう!

しかし、実はこれらは「問題」ではなく、問題がある結果としの「現象」だと思うんです。そしてその大部分は「市場メカニズム」に拠るトコロが大きいので、一言で言ってしまうと「仕方ない」と言わざるをえない。それぞれの問題点(とされている)原因は…

  • 若者の日本酒離れがヒドイ!→「酒離れ」は世界的現象、人間関係の希薄化と消費の多様化
  • 日本酒の販売量が減り続けている!国酒なのに!→不況、競合との競争激化
  • 蔵元の数も減り続けている!伝統文化が途絶えてしまう!→上記を受けての自然淘汰

というコトになると思うんです。

競合激化と重税、消費の多様化

歴史的にみれば明治時代までは日本人がお酒といえば「日本酒」のコトだった、まるで天国のような状態でした。 酒類における日本酒のシェア100%です。 でもその後、ビールが、次いでワインが紹介され、明治政府の洋化政策も相まって優遇される一方、一人勝ち状態だった日本酒は基調な財源とされ、度重なる増税で苦戦するようになります。

1899年には国の税収の38.8%が酒造税、という状態。「日清・日露は酒税で戦った」なんて言われたそうです。

戦後復興してからは低アルコールな「缶チューハイ」なんかも出てきて、飲み方が多様化。独占的だった日本酒の牙城を削り続けてきました。それを受けて生産メーカーの数も現象の一途を辿り、まだ底を打ってはいません。

現状を嘆いてみても仕方ない

だからと言って、「明治時代前」まで戻すことはもはや不可能。 消費者は和酒や洋酒や、沢山のお酒の中から自由に選択して楽しむという利便性を得ています。 居酒屋で酒を酌み交わしながらではなく、自宅にいながらスマホをいじって交流したり、暇をつぶしたりするコトもできるようになりました。特に先進国でお酒消費量が減っているのは、そういうトコロも大きいと思います。

「日本酒の販売減」の理由の大部分と「消費者の自由・利便性」とはトレードオフの関係になってしまっているので、上記のような事象に対して「問題だ!」と言ってみても「仕方ないじゃん」と言うしかないんです。

では「仕方ない問題」ばかりなのか?といえば、「仕方ある問題」もあると思います。

仕方ある問題:SAKEOH酒逢が考える日本酒の問題点

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このブログ記事のタイトル『「普通酒」について:「カサ増し廉価版日本酒もどき」が「普通」という羊頭狗肉の大問題』の通りで、文化的・歴史的には決して正統ではない、この70年間ちょっと市場に出回っている「カサ増しの廉価版日本酒もどき」が日本酒の「普通(スタンダード)」だとしてしまっていること、これこそがこんなにも美味しい日本酒が、いつまでも通だけが知っている、一般人からは「なんか難しそう」と敬遠される要因になっていると思うからです。

「文化的・歴史的に正統でない」とはどういうことか?年表を整理してみる

「カサ増し廉価版日本酒もどき」である「増醸酒」が登場する歴史的経緯を見てみましょう。 戦前戦中戦後の物資不足への対応として、カサ増しした日本酒「増醸酒」が登場する経緯が以下です。

超ザクッとまとめると…

1939年:酒の公定価格制スタート → 金魚酒が出回る → 1940年級別制度(アルコール濃度規定)
1942年:開戦、統制経済下で食料管理制度 → 酒米も配給制へ
1943年:酒類が配給制に
1945年:終戦、酒の圧倒的供給不足 → 違法な「闇酒」横行(失明や死亡多数) → 対策として「合法な増醸(カサ増し)酒」開発が急務
1948年:全国の蔵で腐造(酒造り失敗)が相次ぐ
1949年:増醸の技術が確立し、全国で三増酒生産開始、酒類の配給制は解除
1950年:密造酒撲滅のための酒税大幅減税

つまり、戦争による物資の統制が始まるまでは、日本酒とはお米で造るのが当然であり、醸造技術も日進月歩で進化していた。しかし戦中戦後の混乱の中で、「お米は足りないがお酒の需要はある、この状況を放置すると闇酒が氾濫してしまう」という超特殊状況での対処療法として「増醸酒」が誕生、市場に受け入れられたんです。

その後も酒米配給と需要過多の状況は続き…

  • 公定価格制のため、作り方によらず売価は一定
  • 配給米で純米酒を造るにしても低精白になる → 増醸酒の方が味のウケが良い
  • 増醸酒は生産拡大が容易であること
  • 増醸酒は利益率が高いコト
  • 増醸酒は腐造などのリスクが低いこと

上記の要因により、無理してリスクを背負って昔ながらの清酒を造るよりも、市場の要請に応えて増醸酒をドンドン増産することが、酒蔵の経営的にもベスト(低リスク、高利益率)であった。そのため三増酒が市場の主流であり続けました。

1960年:お酒の公定価格制廃止・酒米の配給制度も解除
1961年:米の消費量が減少に転じる▶米あまり▶減反政策

斯くの如く、戦前〜戦後にかけての約20年の特殊状況下、日本酒がカサ増しされて流通せざるを得なかった不幸な時代がありました。日本酒業界が増醸酒製造に梶を切ったコトを悪く言う向きもありますが、私は仕方がなかったと思います。

時は流れて今、状況はどうなってるのか?

それでは日本が奇跡の復興を果たして世界でも屈指の経済大国になった現在、そういったカサ増し酒はなくなったのか? 全然なくなっていない。どころか市場の主流にどっかりと居座っています。 普通の日本人が、お酒を飲むようになって初めて飲むお酒は高確率で「普通酒」です。

さすがに「三増酒」は日本酒とカテゴライズされなくなりましたが(2006年の法改正で「雑酒」扱いに)、その流れを汲んだ低コストのカサ増し酒である「普通酒」(二増酒までOK)が日本酒の総消費量に占める割合は今も65%を超えます。

一方、「こだわりのお酒業界」界隈では

1970年代の地酒ブーム
1980年代の吟醸酒ブーム
1990年代の「14代」・「獺祭」のブレイク、個性豊かな発信する若手杜氏や蔵元という流れ

そして現在にいたるんですが、それはあくまで一部のこだわりの地酒業界の方々と「食に対して意識の高い人々」例えばDANCHUを読むような層での出来事であり、マス市場の中心はずーっと「普通酒」。

一般的な若者がお酒を飲み始める頃に「普通酒」を飲み、「日本酒とはあまり美味しくないものだ」と誤解してしまう状態が続いています。

最近では海外で日本酒がブームになっていますが

政府も「国酒」として日本酒輸出を振興していますが、もっともっと海外で日本酒消費が広がって一般化した時に、日本が誇る文化である「日本酒の スタンダード(普通)=混ぜ物でカサ増ししたお酒です」…というコトでいいのかな…、というか良い訳ないなと思う訳です。

では「普通酒」という呼称はいつからできたのか?

これが結構最近のコトなんです。1990年から。

1990年までは「日本酒級別制度」(1940年施行)に拠って分類をされていました。施工直後は「特級」「一級」「二級」「三級」「四級」「五級」まであり、その後何回かの法改正を経て「特級」「一級」「二級」の三段階に落ち着きました(1949年)。

では何をもってお酒の優劣を決めるのか?

等級の基準はアルコール度と酒質です。

なぜアルコール度?アルコールが高い酒=美味しい酒ではないだろうに?と考えた方も多いと思いますが、この等級、上述の年表の一番上、1939年の酒の公定価格制」と「金魚酒」に関連があります。

昔の日本人は結構イケイケでびっくり

つまり酒米不足 → 需要過多 → でも価格は政府に決められてる → だったら倍に薄めて売ったら倍儲かるんじゃね?という発想で、全国でお酒を水で薄めて販売する事例が多発。本当かどうかは知りませんが、「金魚を泳がせても大丈夫なくらい薄めた日本酒」=「金魚酒」と呼ばれるものが出まわりました。対策として政府が持ちだしたのが「日本酒級別制度」。つまり「薄めてない酒」=「良い酒」だった時代にできた法律だったんです。

そしてお役人もイケイケ

そしてこの制度、税金の徴収の為に利用された制度でもありました。 「特級」なのか「一級」なのか「二級」なのか、それを決めるのは国税局の酒類審議会の官能審査でした。 厳正なる審査は行われていた(ハズ)ですが、裏のからくりは等級が上がれば酒税も上がるというトコ。 つまり「国が『特級』ってお墨付きを出してやるんだから、その分高い税金収めてよ、箔が付いて売れるんだからいいじゃん」という側面が少なからずあった。

今だったら大問題だよな…と思われた方も多いかと思いますが、この制度はなんと1990年まで続きます。 なんとか「特級」で箔をつけて売ろうとする大メーカーもあれば、味に自信のある地方の酒蔵などは、「特級」の品質のものを、わざと「二級」で審査を通し販売、その分安い価格で販売促進してた事例もあったらしいです。

そして現行制度へ

かように市場原理を歪めてしまう制度だったのは間違いなく、様々な批判を受けて1990年にこの制度は廃止。その代替としてでてきたのが「特定名称酒」「普通酒」という計9種の分類と呼称です。

特定名称酒って何?という方は過去のエントリをチェックして下さい

えーと、何の話をしてたんでしたっけ?

ここでやっとタイトルに辿り着きました。 だいぶ長く書いてきたので、既にタイトルをお忘れだと思いますので再度…

「普通酒について:「カサ増し廉価版日本酒もどき」が「普通」という羊頭狗肉の大問題」です。

分類する制度は素晴らしい

過去の級別制度のようにお酒の優劣を決めるのではなく、「どんな造り方の酒なのか」を分類だけするこの制度、考え方自体は非常に優れていると思います。キレのある日本酒が好きな人はアル添系を、純米が好きであれば純米系を、香り華やかなのが好きであれば吟醸系を選べる。全国共通の表現をルール化したことは評価すべきと思います。

しかし「増醸酒」をどう分類・呼称すべきか…

きっと呼称を決めるに当たって、国税局の偉い人達も頭を悩ましたとは思うのですが…、 当時も市場の主流であったカサ増しの廉価版日本酒もどきである「増醸酒」をどのように分類・呼称するか。

本来であれば「特定名称酒」だけが「日本酒」であるべき、でも市場に出回っている多くは「増醸酒」。 ネガティブな意味を持った言葉を呼称とすれば、売上が落ちる、そうすればメーカーも困るし、売上減になれば税収が落ちる…、きっとあれこれ悩んだ末に「普通酒」としたのだと思います。

かくして戦前戦中戦後の窮乏期を乗り切る為の方策だったハズの、歴史的・文化的には正統ではない「増醸酒」は日本酒のスタンダード(普通)となったのでした。ちゃんちゃん。

将来の為に、「日本酒=特定名称酒のみ」とし、それ以外は「日本酒」を名乗らせてはいけない

「いいじゃんそんなの。こだわりのある人が『特定名称酒』飲めばいいだけじゃないの?」とお考えの方もいらっしゃると思います。 短期的にはそういう考え方もできなくもない、けど長期的にはダメ、絶対。増醸酒カッコ悪い。

今、海外で日本酒が高く評価されています。何故か?理由は2つ。

  • 「特定名称酒」中心に輸出がされているから

  • うんちく好きのアーリーアダプターが今の市場だから

こんなに美味しくて、且つワインと比べても価格競争力もある日本酒が今後も広がっていかないわけがない。 では市場がどんどん広がっていって、「うんちくは面倒臭いけど美味しいモノは好き」的なマス層まで達した時に、もし「普通酒」が「日本酒のまま」だったら?

きっとこんな会話が発生してしまうと思います。日本酒初心者をピーターさん、日本酒大好き日本人山田さんの会話だと思って下さい。

ピーター:「こないだ日本酒をレストランで飲んだんだけど、なんかツンとして美味しくなかったな〜」
山田:「銘柄は何を飲んだの?」
ピーター:「覚えてないけど、でも日本で老舗の大きなメーカーのやつだって言ってた」
山田:「メーカーの大小は品質とは関係ないよ、『普通酒』って書いてなかった?」
ピーター:「そこまで見てないよ、何?日本酒には色々あるの?」
山田:「普通酒」ってのはあーでこーで、「特定名称酒」があーでこーで」
ピーター:「なんかめんどくさいんだね、日本酒って。大きなメーカーでも低品質があるってコトなんだ?」
山田:「だから大メーカーでも『普通酒』はあーで、小さい蔵でも『特定名称酒』はこーで」
ピーター:「なんだか難しい世界ってことだね!めんどくさいから次からワイン頼めばハズさないかな」
山田:「ぐぬぬ」

日本車が世界で評価を受けているのは、「例外なく高品質」だから

この「例外なく」というのが重要で、例えば中国産の車に対抗するために、トヨタが安かろう悪かろうの車を出し、日本車の各メーカーが追随したとしたら? あっという間に日本車のイメージは崩壊すると思います。通とかマニアは生産者側の意図まで理解してくれるから良いですが…、世の中の大半の「理屈はよくわからないけど、〜って良いんでしょ?じゃぁそれで」というマス層は「なんだかめんどくせ」と離れて行ってしまう。

というか、この山田とピーターの会話は戦後日本で度々で繰り返されてきたハズ

日本の場合は「普通酒」が市場で支配的なのだから状況はより悪い。 地元の居酒屋にすら「こだわりの地酒メニュー」が置かれ出したのはほんの最近の話、「清酒」とか「冷酒」とだけ書かれて、銘柄も書かれていないメニューを見て注文すれば9割方美味しいとは言いがたい日本酒がでてきたもんです。

結果として「こだわりの日本酒」がDANCHUを購読するような「食に対してアンテナの高い人々」の間でしか消費されず、ワインと比べてそんなに高いわけでもないのに広がっていかなかった。そして「日本酒って悪酔いするから」「日本酒はツンと臭い感じが嫌」「おっさんが飲むもの」といったネガティブイメージを確立してしまった。

あくまで推論ですがそう思っています。

日本酒が日本でファンを取り戻し、世界でファンを獲得しようと思うのであれば

シンプルで無ければならない

シンプルであるとは、「日本酒=高品質」であること。トヨタ車に故障が少ない感じ。カップラーメンはカップラーメンの味がして、二郎系ラーメンのお店に行ったら、アレが出てくる。お客様とはそういうシンプルな安心感で結ばれてないと、言い訳を聞いてくれる優しい「通」や「マニア」より先に広まっていかない。

しかし「増醸酒」「日本酒」であり、それが「普通酒」であるとしている限り…

ビギナーが初めて口にするのは、一番身近で手軽な「カサ増し廉価版日本酒もどき」になってしまう、高確率で。戦後の日本酒販売量が減少している大きな要因のひとつと言っていいと思います。 結局、現在の売上が大きいから…という理由で、「増醸酒」を日本酒でないモノとカテゴライズし直しせず…

「あれ?あまり美味しくなかった?あー!この日本酒は『普通酒』って言って、普通って名前がついてるけど、ホントは戦中戦後の窮乏期に端を発する廉価版の日本酒もどきであって、本当に美味しい正統な日本酒はといえば『特定名称酒』というのがあって、そっちを飲んでみないと日本酒の美味しさはわからないから、今度はそっちを試してみてよ、ホントの日本酒は美味しいんだよ」

などと言い訳がましいコトをいくら言っても聞いてくれるのはマニアだけ。市場の大多数は「なんかめんどくせ」と敬遠してワインかビールかウーロンハイを選択する。

日本酒を誇るべき国酒として、国の内外でファンを獲得していくのであれば

「普通酒」「増醸酒」と改め、日本酒ではないカテゴリ(合成酒?雑酒?代替日本酒?)に分離するのがまず第一歩であると思います。

日本酒の知識が皆無で、いざ今日初めて飲もうという人が、メニューを見ても「合成酒」って書いてあれば、思いとどまって「日本酒ないんですか?」ってなりますよね?まかり間違って飲んでしまっても「合成酒はこんな味なんだ」と区別ができる。

と、まぁだいぶ「増醸酒」について批判的に書きましたが…

決して「増醸酒それ自体」や「増醸酒を作ってるメーカー」「増醸酒の味が好きな人」や「価格的要因で増醸酒を選ぶ人」をディスってる訳ではなく、「日本酒」と称して「増醸酒」を売る「羊頭狗肉」をこそ問題としているだけなので、ご理解頂きたいと思います。

しかし呼称の改変なんかそんなに簡単なことじゃない

だからSAKEOH酒逢は今日もお客様に無料で試飲をして頂き、草の根で「正統な日本酒」の素晴らしさを伝えております!

という事で、だいぶ長くなってしまいました。少しでもご賛同頂ければ嬉しいです。駄文にお付き合い頂きましてありがとうございました。

それでは